今回は福島県との県境に位置する宮城県白石市で国産きくらげを栽培する24歳の佐藤主彬(カズヨシ)さんにお会いしてきました。
【国産きくらげとの出会い】
ご実家が工場を経営されているということもあり、学生時代は千葉県にある工業系の大学に通っていた佐藤さん。
大学卒業後は就職も考えていたが、以前から自分で何か事業をしてみたいという考えが強くあったため、卒業後は就職をせず実家のある宮城県白石市に帰省した。
帰ってみると、帰省の3年前に佐藤さんの祖父が他界してしまい、昔から農作物を育てていたビニールハウスを管理する人が祖母だけになってしまった。佐藤さんの祖父と祖母は一年を通してビニールハウスで多種多様な野菜を作っていたそうで、佐藤さんも幼少期からお手伝いをしていたそうだ。
(佐藤さんがきくらげ栽培を始めたビニールハウス)
そんな佐藤さん本人にとっても思い入れのあるビニールハウスがこのまま使われなくなってしまうのは勿体無いし、何より寂しいということで祖父が残したビニールハウスを活用する事を決意した。
ビニールハウスを活用すると言ってもどんな作物を育てればいいのか当時農業経験があまりなかった佐藤さんは悩んでいた。
そんな時、佐藤さんはお母さんが作った「こずゆ」をいつものように食べていたことが転機につながった。
(※「こずゆ」とはホタテの貝柱でだしを取り、豆麩(まめふ)、にんじん、しいたけ、里芋、きくらげ、糸こんにゃくなどを加え、薄味に味を調えたお吸い物を、会津塗りの椀で食す福島県の郷土料理。福島県が隣の白石市でもよく食べられている料理)
このこずゆに入っていたきくらげが、どのようにして作られているのかに興味を持った佐藤さん。
その日からきくらげについて様々調べるようになり、今の日本では国産きくらげが珍しいということを知り、ビニールハウスできくらげを育ててみることにした。
(佐藤さんが販売する乾燥きくらげ。独自に開発したきくらげパウダーも販売している。)
【いざ、きくらげ栽培へ】
佐藤さんは学生時代にアルバイトで貯めたお金をきくらげ栽培のために全て使い、まずはきくらげに光を当てないため、ビニールハウスを遮光のシートで覆った。合わせて、ハウス内の地面の整地、菌床を置くラックの設置、菌床の購入、事業立ち上げのために必要な全てを一人で行った。
また、栽培の他にも宣伝、販売、全てのことを一人で行っているため、一年目はかなり忙しい日々を過ごしていたそうだ。
二年目の今年は、IOTを駆使した栽培方法を取り入れている。
自分の持っているスマートフォンできくらげが栽培されているハウスの中の温度を確認。温度が高い場合にはスマートフォンからボタン一つでハウス内に霧を発生させ、ハウスの温度管理を行えるようになり、徐々に効率よく栽培ができる環境が整えられてきている。
(スマートフォンを駆使し、遠隔でハウス内の湿度をコントロール)
そんな中でも繁忙期になるとハウス内がきくらげで埋まることもあり、収穫、洗浄、石づえ切り、パック詰めの作業を一人で行うのはなかなかの作業量で、最近では収穫時に友人や地域の方も手伝いに来てくれているらしく、繋がりも増えてきている。
【フレッシュな仲間と共に】
きくらげ栽培から1年がたったある時、近所の方から「佐藤君と同年代の女性二人が近くで農業を一年前に始めてたよ。」と教えてもらい紹介されたのが、以前とうほくやさい便でもご紹介した「あれこれふぁーむさん」だった。
(ウェブマガジンではここにリンクも入れたいね。)
佐藤さんのビニールハウスから約200m先で一年前の同じタイミングで同年代が農業を始めていたことにお互い驚き、今では白石市を盛り上げていく若者として一緒にイベント出店も行っているとのこと。
(艶かしい収穫間近のきくらげ)
【国産きくらげを多くの方に】
日本のスーパーではまず、生のきくらげを目にすることはないだろう。
よく目にするのは中国産の乾燥キクラゲばかりだ。
佐藤さんのきくらげのオススメの食べ方はなんときくらげのお刺身!国産のきくらげだからこそできる味わい方だ。
沸騰したお湯で30秒ほど茹でて、すぐに冷やしてわさび醤油で食べるのがもう絶品。
(あまり見かけない白きくらげも栽培中)
ヘルシーでいくらでも食べられるきくらげ。しかも嬉しいことにきくらげは栄養価が高く、食物繊維、ビタミンD、ミネラル豊富なスーパーフードだ。
現在ではメディアに取り上げられることも多く、様々な方との繋がりも増えコラボすることもあるそうだ。その中でも白石市の特産品である白石うーめんとコラボした商品が人気だったとのこと。
つゆにきくらげの出汁を入れ、さらにはうーめん自体にきくらげを練りこみ、まさに白石市の名産だ。
祖父の残したハウスを利用し、国産きくらげを全国に広めていく青年の姿には目が離せない。